『はじめに』
ニュースでよく取り上げられる半導体。2020年のコロナ禍以後、その報道も多くなっている。
半導体について少しわかっていないと、報じられている背景や意味が、もう一つ頭に入ってこない。
半導体に関する自分の疑問点として、
- 半導体とは、そもそもどんなものだった?
- 半導体というと、80年代ころは、日本の半導体が、世界のトップレベルだったのに、なぜ変わってしまったのか?
- なぜ半導体が国家間の覇権争いに関係するまでになっているのか?
といったもの。
これらを理解するために、次の2冊を読んだ。
1.書名:「半導体戦争-世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防-」著者:クリス・ミラー
2.書名:「ビジネス教養としての半導体」著者:高乗正行
1.の書籍は、アメリカの経済史家により書かれ(訳:千葉敏生)、アメリカ側からの視点で半導体の歴史と現在の状況などが、著者の豊富な取材に基づいて書かれている。
アメリカ側からの視点がよくわかり、日本ほか世界に対する政策などが興味深い。
2.の書籍は、半導体商社のトップによる著書。著者は、商社で情報技術事業に携わったり、シリコンバレーでベンチャーキャピタルを設立してきた経歴をもつ。半導体の歴史を間近で見てきた半導体のエキスパートである。
この二つの書籍を読むと、半導体とはそもそもどんなものか、そしてその歴史について、理解することができる。
また、半導体に関わってきた国家(アメリカ、ロシア(旧ソ連)、日本、韓国、台湾、中国など)の歴史の流れを見ると、現在の世界のサプライチェーン体制がどのように形作られて行ったかがよく理解できる。
『重要な内容として』
ポイント1.そもそも半導体とは?(半導体の基礎知識)
一つのチップにトランジスタ100億個など、もはやその具体的なイメージは描けないが、戦後いかに目覚ましく技術が進展してきたか、その精密さ、微細さが驚異的であることはわかる。
その技術開発への投資、また製造工程の多さゆえ、設備に関して莫大な費用が掛かり続けるということも特徴的なことである。
半導体の利用範囲としては、家電製品、PC、自動車、飛行機、産業機器、医療機器などで、半導体は、人々の生活に欠くことのできないものになっている。
ポイント2.半導体の技術と産業発展はいかに進んできたか(日本の台頭と世界を牽引した時代、そしてその後の経緯)
半導体開発を牽引してきた最重要国は、アメリカであり、何人ものアメリカの研究者の活躍があった。産業としての発展もアメリカが先端を走っていたが、80年代頃は、日本が、優秀な実業家、企業により世界を牽引する時代があった。しかし、技術の進展の速さゆえ、開発と、設備投資など莫大な費用の掛かる産業であることを背景に、各国の政策や企業の産業拡大のやり方が絡み合って、日本の半導体シェアは下がり、韓国、台湾が台頭していった。
ポイント3.米中の覇権争い
1.の書名に「戦争」とあるように、まず連想するのが軍事利用である。
その技術開発は、宇宙、サイバー、電磁波などで、具体的には衛星(偵察、通信、GPS)、ネットワークやデータ、物理的な通信などで不可欠となっている。
最新の軍事では半導体技術で優位に立つことが、国家としての覇権を握るかどうかにかかわっていることがよく理解できる。
半導体産業が、今後どのような道を歩むかということは、世界情勢に影響してくる大きな要因の一つとなっている。
政治的にも、経済的にも目が離せない状況であり、特にアメリカと中国がどう関わっていくのか、日本はどのように関与していけるのかが注目すべきところなのである。
『結び』
半導体は、人々の日常生活に欠かせないものであること、また半導体の市場はこれからも成長し、使用機器の分野や種類は増えていくようだ。
半導体の知識を得ることで、半導体の報道の意味がより理解しやすくなり、今後の動向にもより関心をもてるようになる。