【概要】
本書は、著者が自転車で世界を旅しながら出会った食べ物と人々を綴った旅行記である。単なるグルメ本ではなく、旅の過酷さや生死を分ける水の補給、文化の違いに直面する面白さが詰まっている。
特に、著者が五感で味わった食の描写は圧巻であり、各国の料理に没入する感覚を読者にもたらしてくれる。食文化を通じて世界を知るという視点が新鮮で、旅好きだけでなく、食べることが好きな人にも楽しめる一冊だ。
【心に残った部分】
1. 水の重要性——生死を分ける補給計画
旅の中で最も基本でありながら、最も重要だったのが「水」だった。著者は、どのくらいの水を携帯し、次の補給地までどれだけ距離があるのかを常に計算しながら走る。だが、予想外のハプニングは尽きない。
この話を読んで、自分の幼少期を思い出した。友達と汗だくになりながら遊び、近所の郵便局のウォータークーラーで喉を潤したあの感覚。大人になってから、喉の渇きを感じることが少なくなったと気づいた。だが、著者の旅ではそんな生ぬるい話ではない。「水を手に入れられなければ命に関わる」——そんな状況での決断と行動には、思わず手に汗を握った。
2. 異国の食文化に驚く
旅の中で著者は、各国の食文化に戸惑い、感動し、時にはがっかりする。特に印象的だったのは以下の3つのエピソードだ。
✅ インスタントラーメンの世界的普及
醤油は日本特有の調味料だが、インスタントラーメンは世界のどこにでもある。国によってスープの味は異なるが、麺文化は共通しており、日本発祥のインスタントラーメンが世界中で食べられていることに誇らしさを感じた。
✅ パスタの「アルデンテ」はイタリアだけ?
著者は各国でパスタを食べたが、イタリア以外ではほとんどの国で柔らかく茹でられていたという。日本人はコシのある麺を好む傾向が強く、ラーメンやそば、うどんも「適度な歯ごたえ」が求められる。だからこそ、柔らかすぎる麺にがっかりした著者の気持ちがよく分かる。
✅ クラムチャウダーは熱くない!?
アメリカではクラムチャウダーがどこでも美味しかったが、どこへ行っても熱々ではなかったそうだ。日本人はスープを熱いうちに飲むことが多いが、それは世界標準ではない。コーヒーも欧米では熱くないものを好む傾向があるらしい。もしかすると、火傷による訴訟を避けるためかもしれない。
【結び】
著者は7年半もの歳月をかけ、自転車で世界を巡りながら各国の食と文化に触れてきた。単なる観光ではなく、人々の暮らしの中に飛び込み、時には危険を冒しながら旅を続けた。
異国の地で食べた料理は単なる食事ではなく、その土地の「生きる知恵」でもある。乾いた大地では水の価値が変わり、治安の悪い場所では食事すら命懸けになる。そんな過酷な旅を経て見えてきた「世界の素顔」は、単なる料理の話を超えて、人生そのものを映し出している。
本書を読んで、改めて「食べることの意味」を考えさせられた。そして、旅にも出たくなった。